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その言葉は夜空を超えて、いつかへ

 anam.


 その日。
 満天の星を背に淡く光るクリスタルタワーの袂、エクセドラ大広場に光の道ができていた。
 キャンドルやランプをふんだんに使われてできたその光の道の間を、一組の男女がゆっくりと歩いていく。
 女の着ている白く美しいドレスが淡い光を受けてキラキラと輝いているのは、使っている生地が光沢のあるものなのか。それともビーズやスパンコールを使っているのか。
 遠目からでは分からないがそれでも淡く美しく長いドレスの裾がキラキラと波打つように形を作っていく。
 ゆっくりと歩く男女が向かう先にはドッサル大門がある。
 大門の前、大門へ向かう大階段の前に光る植物やランプを使ったアーチが置かれていた。
 おそらく祭壇なのだろう。
 その証拠にそのアーチの下には男女が来るのを待っている、この街の指導者。
 英雄の恋人がいたのだから。


「エミ」

 エーテライトプラザの二階。
 エクセドラ大広場を一望できるその場所にたたずみ目下の光景を見ていたエミの耳に自分の名を呼ぶ柔らかい声が届く。
 声の方を向けば、先ほどまで広場にいた自分の恋人がこちらに向かって歩いて来るのが目に入ってきた。

「ラハ」

 近づいてくるグ・ラハ・ティア――水晶公を見て軽く手を上げて挨拶をすると彼はエミの隣で立ち止まった。

「おかえり」

 柔らかい声。嬉しそうな水晶公の微笑み。
 愛する人のもとに帰ってきたことを実感してエミは嬉しさを露わにして笑った。

「ただいま! 私が来たってよく分かったね」

 文字通り世界を股にかける冒険者であるエミはこの日、原初世界から第一世界にやってきていた。
 いつも通りシルクスの狭間から星見の間へとやってきたのだが、ふと近くクリスタリウムで結婚式が執り行われること、その場所はエクセドラ大広場であることを水晶公から聞いていたことを思い出した。
 フェオ=ウルを呼んで第一世界の日付を確認すれば、ちょうど水晶公に教えてもらった式の真っ最中。
 さすがに式の最中に大門が開くのは雰囲気ぶち壊しも良いところだろうと考えたエミは、星見の間からエーテライトプラザにあるエーテライトへとテレポをしてその足でエーテライトプラザの二階、自分が今立っている場所で式を見ていたのだ。
 今日来ることは水晶公にも言っていなかったのに、彼は自分を見つけた。
 だからどうして分かったのかと純粋に気になって問いかけると、

「フェオ=ウルとレスティールがあなたが来たと教えてくれてね。司祭代わりの私の役目も終わったし会いに行ってこいと、あなたが来たことを知った皆が送り出してくれたのだ」
「なるほど」

 フェオ=ウルとはこちらに来てすぐに呼んだし、エーテライトプラザの警護を任されているレスティールもエミが星見の間からテレポで飛んできたときに顔を合わせているので自分が来たこ とを知っている。
 レスティールとしては水晶公の愛する闇の戦士が来たという事実を自分しか知らないと思うわけだから水晶公に伝えてくれたのだろうが、水晶公の友であるフェオ=ウルの方が一歩早かったようだ。
 しかし新郎新婦も他の者も、水晶公ともっと話がしたかっただろうに自分が来たのを知って彼を送り出してくれるとは。
 水晶公が愛する人々に自分たちの関係を受け入れられているのを感じて嬉しくなるのと同時にどこかむず痒さを感じていると、それは水晶公も同じだったようで少し照れくさそうに微笑んだ。


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